|

「懐かしの洋食」と聞くと、伝統のスタイルを守りつづけているイメージが強いかもしれないが、そのスタイルは前述のように実に多様な変化を遂げている。今でこそ一般的なシチューやカレーも、時代によって味の個性は様々だったそうだ。西洋の料理を日本風にアレンジするという折衷料理だからこそ、洋食は今もなお未知の可能性を秘めたジャンルなのかもしれない。 食のいいとこ取り、とも言うべく様々な食文化を取り入れる日本の柔軟な食文化は、「小川軒」のメニューを見ても計り知ることができる。シチューやフライといった昔ながらの洋食の他、野菜をメインにした小皿料理のコースや豚の耳から仕込んだコラーゲンと青パパイヤを組み合わせたスープ、五穀米のリゾットといったオリジナルメニューの数々は、フレンチやイタリアン、懐石の要素もあわせ持った小川さんの食への興味と感性がなせる技だろう。 「もともと小皿料理のコースは、お酒を飲みながらつまみ感覚でいただける洋食を、というお客様の要望に応えて考えたもの。野菜の味がいいので、自然と野菜メインのコースになりましたね。青パパイヤのコラーゲンスープは最近の新作なんです。コラーゲンが肌にいいって言うでしょ?」と、にこやかに話す小川さんのサービス精神も、ファンを呼びこむファクターなのだ。 「小川軒に伝わる昔ながらの洋食を出すことももちろん、食べる人のニーズに合わせて変化していくのが食文化だと思っています。お客様は何を食べたいのか。その声に耳をかたむければ、料理のアイデアはおのずと見えてくるものかもしれませんね。」
日本の食文化を牽引する「小川軒」の3代目が作り出す、次の新しい一皿は何だろうか。 「新橋駅前に小川軒ができたのではなく、小川軒の前に新橋駅ができたのだ」――。とは、「小川軒」の初代、鉄五郎の弁。その言葉が、今の「小川軒」の姿を物語っている。
|