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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

1月のゲスト 曽我 和弘 出版プロデューサー・フードプランナー 私が気になるもの 猪肉(ボタン鍋)

今年最初のゲストはサントリーグルメガイドで“名物料理論”を執筆している曽我和弘さんです。グルメ記事を多く書き、辛口の評論でも知られる曽我さんは大のボタン鍋好きで、冬場に何度も作るのだとか。亥年にあたる07年にぜひトレンドになって欲しいと願っているそうです。曽我さんならではの猪肉のうんちくとともに、その思いを文字から拾って下さい。

同僚の一言がきっかけでやみつきに

 07年は亥の年。やはり今年の初めは猪の話をしなくてはならないでしょう。干支が亥年というから取り上げるのではありませんが、実は私は大のボタン鍋好きなんです。
 私がボタン鍋に目覚めたのは20年以上も前。当時私はグルメとは程遠いゴルフ雑誌に籍を置いていました。会社の同僚がいつも正月にボタン鍋を作るのだと言い、猪肉の専門店を教えてくれたんです。
 その店は「おゝみや」と言い、篠山(兵庫県)に本店を持つ猪肉専門の肉屋さん。店に行くと、3種類の価格帯の猪肉があり、その他に鹿や熊の肉も売っているジビエの販売店でした。その時、ボタン鍋用の味噌とともに買って来て作ったわけですが、それが旨くて旨くて・・・。
 私も同僚に倣い、毎年暮れになると猪肉を買いに行き、正月にボタン鍋を作るという習慣が身についてしまったんです。猪肉はスーパーなどでは売ってないので、友人達はうちに来れば「ボタン鍋を食べたい」とリクエストしてきます。こんな調子なんで酷い時は2月の週末は全てボタン鍋。3連休も全てその料理を作ったことがあるくらいです。
 専門店である「おゝみや」があることでもわかるように丹波篠山はボタン鍋のメッカ。通りを行くと、旅館から料理屋まで何軒もがそれを名物に商っているほど。なぜこれほどまでにボタン鍋が篠山で普及したのかというと、実はこの地にいた陸軍に起因しているようです。
 一時、日本では獣肉禁忌の時代があり、猪を喰うことを禁じてたんです。でも、その時も篠山の人達は猪肉を“山くじら”と呼び名を変え、食していたほど。それが明治になり食生活が一変しました。篠山に駐屯していた陸軍歩兵第70連隊が射撃訓練で猪を撃ち、仕方ないのでその肉を味噌汁に入れた。その話を篠山の料理屋が聞きつけ、将校用に鍋物として出し始めたんですよ。これが一般に伝わるボタン鍋の始まりとされています。しかし、猪肉は縄文時代から食べていたらしいので同じような料理も前時代にはあったのかもしれませんね。

曽我和弘さん写真

いくら煮込んでも堅くならないのが特徴

 現在、日本で猪の三大産地とされているのがこの篠山と天城山(静岡)、郡上(岐阜)。だからこの辺りを旅すると美味しいボタン鍋に出合えるはずです。篠山の猪がなぜ旨いかというと、栗や松茸、黒豆を食べているから。だから地元では「篠山のはグルメ猪や」なんて言っている人もいます。
 猪肉は別称「ボタン」と言われるように、円に並べると牡丹の花に似ています。旨いのは赤身よりむしろ脂身。だから脂身の多い肉を買うべきなんですよ。この肉を根菜類やコンニャクといっしょに鍋に入れ、味噌味で焚くのがボタン鍋ですが、猪肉はヘルシーで、牛や豚と違い、いくら煮込んでも堅くならない。それにこれを食べると、体が温まるんで、寒い冬の日にはいいんですよね。

猪肉写真

 猪は雑食です。なので何でも食べるわけですが、雑食ゆえに臭みがあるんですよね。これを避すのに味噌と山椒が活躍する。だから、ボタン鍋は味噌味なんですよ。地元でこの独得の臭みのことを聞くと、散弾銃も原因しているそうです。散弾銃で撃つと、あちらこちらに玉が入り、血がまわるそうです。だから臭いんだと言う人もいる。そう言う人は仕掛けでつかまえて、川で晒すことで血を流してしまい、その肉を食べるそうです。でも、一般人にはなかなかそんないい肉はまわって来ません。だからいかに味噌味をうまく作るかに専念する方がいいでしょう。
 有馬温泉にある旅館「御所坊」の河上料理長は先に何枚かの猪肉を入れ、スープを作ります。それを15〜20分間ほど置き、そこから野菜、残りの猪肉を入れて本格的に作るそうです。こうすると、猪の旨みがスープに溶け込み美味しくなるのだとか。猪肉は煮込んでも堅くならないので実にいいアイデアです。私も試しましたが、味が深くなって美味でしたよ。

なんと、猪肉のしゃぶしゃぶが存在する?!

 猪肉は味噌味ときめつけていた私をアッと言わせたのが、「本町神湯亭」。この店は十津川村(奈良県)にある旅館の出店ですが、ここではなんと猪肉のしゃぶしゃぶが味わえるんですよ。竹之内店長に聞くと、この猪はある広〜い山野で放し飼いのような状態で飼育しているそうで、エサ場を一定の所に設けているので、猪は常にそこに食べに来るそうです。エサは穀物のみ、雑食じゃないんで臭みが全くありません。
 なのでしゃぶしゃぶを──。おまけに温泉水でするというのも面白いでしょ。ポン酢で食べるんですが、臭みがないからできる技でしょうね。猪肉は何も鍋だけじゃなく、猪肉の肉じゃがや猪肉の味噌炒めなんて料理法も可能。そう言えば三宮(神戸)で食べた猪肉の朴葉焼というのもよかったですね。
 私はこれほど猪肉好きなんで、プロデュースし、関わっている四川料理店「天府」でもこれを使って料理を作ってもらったんです。上田料理長が作ったのは四川風ボタン鍋。豆板醤などを入れ、辛くしたスープで猪肉を焚くんですが、これもいけましたよ。
 最後にこんなエピソードをひとつ。実は猪肉は1月20日頃までにしめたものを食べた方がいいという話があります。それは2月ぐらいから猪は盛りを迎える。雌はフェロモンを出すので臭くなるし、雄は雌の奪い合いをするのでケンカに備え、脂身を堅くしてしまうそう。猪肉は脂身が旨いので、そうなると味はもうひとつとなるのだとか。なんか理に叶っていますが、真偽は確かめたわけではありません。
 さて、ここまで述べて来た猪肉ですが、2〜3年前に一時流行の兆しがあり、色んな所でその料理を見かけました。BSE問題から派生し、羊肉が少し脚光を浴びたことから考えても、今度は猪肉にスポットが当たってもいいのでは・・・。特に猪肉は旬がハッキリしているのがいいですよ。昨今、食材の旬がぼやけてきましたから冬場でないと食せないというのは魅力かも。何はともあれ、亥年の今年こそ、猪肉が流行ってほしいと思うのですが・・・。

ボタン鍋写真

プロフィール

曽我 和弘(そが かずひろ)

グルメ雑誌「あまから手帖」で長く勤めた後、TBSブリタニカを経て、編集制作会社(有)クリエイターズ・ファクトリーを設立。「おはよう朝日です。雑誌です」、「新婚さんいらっしゃ〜い。雑誌になってもいらっしゃ〜い」など数多くの本を世に出す。編集活動の他に飲食店プロデュースも行い、流行る店を数多く生み出した。グルメの辛口評論でも知られ、自分の舌で納得しないと、紹介しないというのが信条。関西ではメディアにも数多く出、グルメの話や食文化の事などで意見を求められることも多い。

曽我和弘さん写真

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