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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

6月のゲスト 古川雅代 ケータリング・サービス業 私が気になるもの 空飛ぶマグロ

6月のゲストはケータリング・サービス業の古川雅代さん。内陸の県に生まれ育って、釣りたての魚を食べて感動した自分の体験から、多くの人に魚のよさを知って欲しいと始めたのが鮮魚のケータリング・サービス。その活動の中で知った「空飛ぶマグロ」が歯応え、味とも、従来のマグロを圧倒しており、「これが次なるマグロだ!」とイチ押し。この耳慣れない名称の、生のまま空輸されたマグロは冷凍マグロとの価格差を乗り越え、本当に普及するのでしょうか。その美味しさの秘密を語ってもらいます。

空飛ぶマグロって?!

 新鮮な魚を注文先の家庭や、パーティー会場などに持ち込んで料理するというタイプのケータリングをしている私が、今、一番注目しているのが『空飛ぶマグロ』ですね。
 これまでマグロと言えば、遠洋漁業の船が獲ってくるか、インド洋あたりで獲られて輸入されてくる冷凍マグロがほとんどでした。でも、最近、あちらこちらで獲られたマグロが生のままで売られるのを目にしたことがありませんか。私たちは、遠洋で獲れながら、飛行機を使って輸送されてくるマグロのことを「空飛ぶマグロ」と呼んでいます。じゃあ、どんなマグロでも空輸すれば、「空飛ぶマグロ」になるのかと言うと、そうではなく、わざわざ空輸するほどの品質を持っているものでなければ「空飛ぶマグロ」とは呼びえないわけです。
 生マグロと冷凍マグロの違いですが、一口食べれば、その違いは明らかだと思います。何よりもまず歯応えが違うんです。マグロって、食べるとサクッと歯が入って、中から汁気が出てくるようなイメージがあると思うのですが、それは冷凍マグロの場合。生マグロは身がモチモチしています。そのモチモチ感を噛み締めていると、段々と旨味が口の中に広がっていくと言う感じです。
 冷凍のマグロは、冷凍することでどうしても細胞が壊れてしまい、解凍するとそこから美味しい汁が漏れていってしまうのです。
 なら、生マグロならどれでも同じだろうと思うでしょうが、さにあらず。生マグロもその獲り方、獲った後の処理の仕方に、大きな違いがあって、俗に言う「空飛ぶマグロ」は、品質を保つための細心の注意を払われ、なんと24時間以内で日本まで運んでくるのです。

調理中の古川雅代さんとマグロ料理の写真

細心の注意を払い、マグロが空を飛ぶ

 私がイチ押しする「空飛ぶマグロ」は、ミクロネシア共和国近海で獲られています。毎日、沢山ある島々から漁に出かけた船で、一匹釣り上げたら即座に、苦しませることなく上手に締め、血抜きをして、神経を抜きます。この時に、どれだけ素早くマグロを締めるかが、味に大きく影響してくるんですよ。
 マグロのような赤身の魚は、泳ぎ続けないと呼吸ができないので、泳ぎ続けるために身の中にエネルギーの元である「ATP」という物質を沢山持っています。このATPは釣り上げてすぐに締めると、ほとんど避費されずに身の中に残り、徐々に旨味であるイノシン酸に変わっていきます。

解体中のマグロの写真

 ところが、釣り上げてすぐに締めないと、マグロは酸欠状態になって苦しみ、その間にもATPは避費され、旨味へと変化するべきATPの総量が減ってしまうのです。そこで、「空飛ぶマグロ」にするためには素早く締め、温度を下げ、できるだけ空気に触れないようにしてと、数多くの手がかけられます。
 ミクロネシアの辺りの漁船はさほど大きくないので、何匹か釣り上げたらすぐに、近くの島の漁港まで運びます。ミクロネシアの小さな島々の間を、小型ジェットが飛び、そのマグロたちを集めて回り、グアムへと運ばれ、そこから大型ジェット機に乗って、日本へと到着します。そして直接、契約している人の手元まで届けられるようになっているんです。マグロを釣り上げてから買い手の手元に届くまで、だいたい24時間かかっているぐらいですかね。
 これが普通の生マグロだったら、釣ったマグロがある程度の数になるまで、釣り上げた後も船倉で冷蔵庫や氷の中に入れられ、港に戻ってセリにかけられます。それから仲買いへと、順をたどっていたら、あっという間に2日や3日はたってしまいます。それに、締め方や神経を抜いたりといったあたりに気を配っているところも少ないようですから、どうしてもそれなりの味になってしまうんですよ。

もっとみんなに魚を知ってもらいたい!

 私は滋賀県の出身なんですが、滋賀県って海に面してない県ですよね。だから、私は子供の頃から魚といえばスーパーで見るパックに入った切り身だけ。はっきり言ってその魚を美味しいと思ったことはなかったですよ。ところが、友達に連れて行かれた釣りで、自分で釣った魚の美味しさに感動! 以来、釣りにはまって、よく行くようになりました。こんな単純なきっかけから魚の美味しさがわかるんですよね。
 現在、日本では、野菜は米も含めてほぼ100%が栽培されたものですよね。鶏・牛・豚にして栽培とは言いませんが、食料にするために飼育しているわけです。ところが、魚って、未だに3割近くが天然のものなんですよ。野生のものをそのまま食べられるって言うのは、実際すごいことだと思うんです。なのに、昨今は魚を食べる人が減ってきている。そんな話をしていて、それを何とかできないかなと思って、釣り仲間と最初に始めたのが、生きた魚の行商です。明石などの瀬戸内で仕入れた活魚を、水槽の付いたトラックに入れて売り歩いていたんですよ。
 魚って、卸売市場では、料亭などが、まず一番いいところを買っていくんです。スーパーなどは、その残りの中から、店で売れるものを、買っていく。それも、個々のお店が直接地元の卸売市場で買うのではなく、一旦、物流センターに入って、そこから再分配されて個々のお店に流れるといったルートを辿ります。そうすると、あっという間に1日や2日はたってしまうんですよ。普段の煮物や焼き物といった惣菜に使う魚は、鮮度が落ちると、てきめんに味が落ちてしまいます。これが魚嫌いを生み出す要因で、「何だ、魚って美味しくないんだ」となってしまい、ますます魚離れに拍車がかかりまう。店としても、獲れたての魚を並べたいとは思っているんでしょうが、コスト的に合わない、流通が許さないといったジレンマを抱えているわけです。
 今、国産生マグロで一番高いと言われてる大間のマグロ。1本が40kgぐらいなら40万円はします。簡単に言うと、1kgが1万円ですよね。それが、この「空飛ぶマグロ」だと、1kgが3000円ぐらい。冷凍のマグロになると、これよりもグッと安くなります。みんながよくスーパーで目にするものですよね。
 皆さんが好きだという本マグロは、市場で取引される程度の大きさに育つのに6年はかかります。だから、漁獲を厳しく制限されているんです。一方、「空飛ぶマグロ」はキハダマグロやメバチマグロが主です。これらは、だいたい3年もあれば市場サイズに育つため、漁獲も規制されず、手に入りやすいということも、大きなポイントだと思います。
 ケータリングをしていて思うのは、私たちが食べてもらいたいものと、お客さんが食べたいと思っているものが必ずしも一致しないということです。お客さんは、TVなどで情報を沢山仕入れて、脂の乗ったトロを食べたいと思う。でも、こちらがオススメしていきたいのは、味わい深い赤身です。大間マグロのトロに高いお金をかけても、赤身ならスーパーの冷凍ものでもいいと考えてしまっている方に、ぜひ、生の赤身のよさを知ってもらいたいと思っています。
 こじんまりとしたホームパーティーから、お店を借り切ってのパーティー。他にも、結婚式の披露宴で「空飛ぶマグロ」をさばいて料理を出して欲しいと言ってお呼びがかかったことが何度もあります。初めは、披露宴で魚なんかさばいてもいいのかなと思ったのですが、30〜40kgもあるマグロを会場に持ち込んでさばくと、かなり盛り上がり、皆さん興味深げに見て、マグロの赤身の味を再認識してもらっているので、それもありだなと思いました。
 ケータリングといってしまうと、金持ち相手の高級なといったイメージがありますが、出来るだけ手頃な価格で、普通の人に、嘘のない、本当の魚の美味しさを知って欲しいなと思いますね。

解体されたマグロの写真

プロフィール

古川 雅代(ふるかわ まさよ)

10年勤めた冷凍食品会社を1年半ほど前に退職。趣味の釣り仲間と始めた魚の行商を経て鮮魚のケータリング・サービス業「旬・鮮屋」を開業。大手水産会社に勤める釣り仲間や、その友人など、ブレーンも多数。いかに美味しい魚を仕入れ、美味しく食べてもらうかの研究に余念がない。ケータリング・サービスは、「空飛ぶマグロ」だけでなく、瀬戸内の活きのいい魚など多種を扱い、「現在は近畿圏中心だが、徐々に範囲は広げていきたい」と話す。

古川雅代さん写真

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