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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

7月のゲスト 藤井文子 山と溪谷社 編集者 私が気になるもの 摘み菜

7月のゲストは山岳や自然分野の雑誌・書籍で知られる山と溪谷社の藤井文子さんです。藤井さんは平谷けいこさんと知り会い、摘み菜に傾倒。彼女が書いた本まで編集したほど。タンポポやレンゲソウなどおなじみの草からワラビ、ゼンマイの山菜まで、身近な草木が食材に変身するのだと言います。気がつけば街中には食べられる草木がいっぱい。この話を聞くと、住む街が一変しそうな気がします

平谷けいこさんに出会い、草を摘むことを知る

 「摘み菜が次なるトレンドに」と言ったところで、みなさんはピンと来ませんよね。まず、摘み菜とは何かを説明しましょう。摘み菜は草・木・藻などの食べられる植物の総称です。でも、特別なものではなく、街中でも野山でも身近に生えている草や木のことを言うんですよ。私はこれを観賞用にと言うのではなく、摘んで料理に用いることを提案したいのです。
 私が摘み菜を知ったのは「摘み菜を伝える会」の平谷けいこさんに出会ったことから。平谷けいこさんは大阪在住の摘み菜料理研究家。食薬草の会で研究し、85年から各地の特色を生かして摘み菜料理を創作している人です。95年からは摘み菜の楽しさと知恵を次世代に伝えるために「摘み菜を伝える会」を設立し、各地でセミナーを行っています。以前、山と溪谷社でも「四季の摘み菜」という彼女の本を出版したことがあります。当時、私はまだ会社に入ってまもなかったこともあり、編集というより、むしろ校正を手伝う程度の関わりでした。本自体は彼女が朝日新聞に掲載していたものをまとめたという内容。摘み菜を使った料理も少しは載せていましたが、レシピを箇条書きした程度の簡単なものでした。
 でも、私が驚いたのは身近にある草がこんなに美味しく食べられるんだと言うこと。例えば、誰もが知っているタンポポは、水をさらし、アクを抜き、焼いたイカといっしょにすると、「タンポポとイカの春サラダ」に早変わり。少し苦みのある味が印象的な簡単サラダになります。
 また、夏に咲くヒルガオは、素麺を入れた汁に花の上2/3の部分を茹でた芽先、葉を浮かべ、「コヒルガオの花と芽の冷やし鉢」として味わうことができるんですよ。
 私は平谷さんのこのような創作にある種の驚きを覚えました。そこで、カラー本にしてもっとレシピを載せたものを出せないかと提案したことがあるんです。その時、自身の研究が途上だったらしく、平谷さんには、「摘み菜の美味しい食べ方を研究してからね」と言われました。
 その後、当社発行の雑誌「ウォーク関西版」に連載を持ってもらい、つながっていたのです。
 そうこうしていると、05年に平谷さんが発足した「摘み菜を伝える会」が10年目になり、記念に出版しようかとの声が挙がったんです。でも、編集時間がなく、ようやく12年目となる今年に「摘み菜がごちそう」なる本を世に出すことができました。

コヒルガオの花と芽の冷やし鉢

草を摘んで料理にしよう

 このように述べると、摘み菜が平谷さんの創作のように思えるかもしれませんが、「君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に ゆきはふりつつ」と古今和歌集にも詠まれているように、古くから日本人の暮らしに溶け込んでいたもの。ヨモギを摘み、餅にしたりするのもそうですし、ツクシをお浸しにするのもその好例です。
 今回、「摘み菜がごちそう」には、四季を通しての摘み菜の楽しみと、それを使ったレシピを写真付きで掲載しています。

ツユクサの花とツユクサのナムルの写真

 先ほど紹介したヒルガオは夏に咲くつる性の多年草。花も葉もツルンとのど越しがよく、サツマイモの茎に似た味草です。先述のように素麺に浮かべてもいいですが、サツマイモを蒸し、熱いうちに団子粉をつなぎに混ぜながらまとめ、あんを入れて丸めると、美味しい芋餅ができあがります。
コヒルガオはけっこう街中で見かける草。街菜のエースとも呼ばれているほどで、注意してみると、周囲にあることも。もし見つければ摘んで芋餅を作ってみるのもいいんじゃないでしょうか。
 夏の摘み菜で代表的なのがタチアオイ。この花は色鮮やか、一見こんな花が食べられるの?との疑問も湧くでしょうが、実はこの花びらでチーズをくるりと巻くと、おつまみができあがるんです。魚のすり身の天ぷらをタチアオイの花とシソの葉で巻いて食すのもいいですよ。白い花びらはスープに浮かべると、とろ〜りとして、さすがにオクラの仲間だというのが実感できるほど。また、青い花びらが特徴的なツユクサは暑い夏を乗り切るお助け菜。手作りコンニャクに使ったり、わらび餅粉に加えたりして楽しめます。焼肉のお供に、ツユクサのナムルなんてのもいいですね。

暮らしている街を見直そう

 本にして鮮やかな色の花を載せてみると、山にしかこれらの草木がないように錯覚しますが、意外にも街のあちこちにはこれらの摘み菜が沢山見られるんですよ。例えば、東京にはヤマモモの街路樹が多く植えられています。このヤマモモを取って来て、ジャムにすると美味なんです。但し、排気ガスの影響を受けてないものを選んで欲しいのですが…。
 私は一時期、三田に住んでいたんですが、赤坂にある会社まで毎日歩いて通っていました。ある日、アメリカ大使館の横を見ると、ヒメジョオンが咲いているではありませんか。注意して見ると、あちらこちらにヒメジョオンが。実は以前から咲いており、私達は知らなかっただけだったんですね。大阪駅でも植え込みをよく見ると、草が生えているのではなく、食用にできる摘み菜だったりするんですよ。
 私は「摘み菜がごちそう」を編集して、自分が住んでいる場所をもう一度見返してみようと考えました。先日、私がこの本を持って街を歩いていると、小学2年生ぐらいの女の子が寄って来て、「これ、なぁ〜に?」って本を指すんです。
渡してやると、一生懸命見入っているですよ。そしてクサイチゴのページを開け、「このイチゴ見たことあるよ」って。そして彼女は「このイチゴが咲いたら見に来てね」と言って帰って行きました。街中で遊ぶ子供の方が私達大人より摘み菜を知ってるってことですね。
 もし、今回のトレンドウォッチャーを読んで興味が湧いたら、一度摘み菜に出かけてみて下さい。これが広まれば、私はある種の食育になるとも思っているくらいです。

 四季の野草「摘み菜がごちそう」の写真

プロフィール

藤井 文子(ふじい ふみこ)

雑誌「山と溪谷」でおなじみの出版社(株)山と溪谷社にて書籍などの編集を担当。ライフスタイルを提案する本や旅のガイド本を多く世に出す。最近ではDVD付きの書籍「おうちで簡単 本格洋食」を上梓。老舗洋食店「たいめいけん」の味が手軽に学べると好評を得ている。4月23日には平谷けいこ著の「摘み菜がごちそう」を同社より発刊。菜を摘んで料理をし、食べるという誰にでもできる草木の楽しみ方を紹介。なじみの草木からコアなものまで、各地で出合った摘み菜を300種も載せている。自然回帰にもエコロジーにもなる摘み菜がトレンドになってほしいと願っている。

藤井文子さん写真

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