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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

10月のゲスト 盛田佳代 TSUGU&Co.代表 私が気になるもの 紀州備長炭

10月のゲストは、紀州備長炭の製品を扱っているTSUGU &Co.代表の盛田佳代さん。近頃、飲食店の店頭で「紀州備長炭を使っています」の文字を目にすることが多く、今さらトレンド候補にと挙げたところで「?」マークがつくのも事実。しかし紀州備長炭は優秀な燃料のみならず、他にも使い方はいっぱい。今月は色々な意味からも「紀州備長炭が流行る」と話す盛田さんに、日本古来の炭について語ってもらいました。

プロの料理人が絶賛! 紀州備長炭の力

 最近、ちょっと気の効いた焼き物の店であれば、「紀州備長炭を使っています」と言う表示を出していることが多いですよね。グルメ番組や雑誌などでも、紀州備長炭で焼いたものは美味しいといわれていますが、皆さんは、なぜだかご存知ですか?
 紀州備長炭は、そのほとんどが「姥目樫(うばめがし)」、別名「馬目樫(うまめかし)」という堅い樫の木の一種が原料となっています。もともとの木が堅くて重いのに加えて、独特の製炭方法で焼き締めてあるために、火持ちがよく、他の炭と比べると、長い時間火力を保つのです。また、その製炭方法の特徴で、炭の中の不純物をほとんど製炭中に放出してしまうために、燃やしている最中に、変な匂いがしないということも挙げられます。即ち、燃料から余分な匂いがしないと、素材の香りがそのまま生かされるのです。 それにガス火や電気炉で焼き物をするよりも、素材の表面が乾燥しにくいといった利点もあります。また、備長炭の火からは遠赤外線が出ているので、外を焦がさず、中までじっくりと火が通るのです。
 プロの料理人からは、「特に野菜を焼いた時にその良さを実感するよ」との意見もいただいています。その方が言うには、備長炭で野菜を焼くと、乾燥しすぎずにそれでいてパリッと焼き上がり、中はしっとり、野菜の持つ繊細な香りが損なわれることなく焼き上がるのだとか。
 そこまでプロの料理人たちを魅了する紀州備長炭ですが、燃料以外の使われ方も随分と知られるようになってきました。例えば、水道水に備長炭を入れて一晩冷蔵庫に入れておくと、水の中のカルキや、トリハロメタン、匂いなどが吸収されて、翌日には驚くほどまろやかな水になっています。これは、備長炭の中には無数の細かな穴が開いており、その穴が色んなものを吸着するから。それらの表面積を合わせると、小さな炭でも、後楽園球場ぐらいの面積だったりするのですよ。わざわざ水差しを準備するのが面倒だというのなら、きれいに洗ったペットボトルに、細い枝炭(えだすみ)を入れておくだけでOK。料理にはいい水が必要と言いますから、一度実践してみてください。

炭の写真

知っているようで知らない、炭の歴史と製法

 再度言いますが、紀州備長炭は、姥目樫を原料とする木炭です。木炭には、大きく分けて白炭と黒炭があり、備長炭は白炭の方で、その名の通り、表面が白っぽいのです。黒炭と白炭の違いは、その製造方法、特に最後の火の消し方にあります。
 木炭は、石や粘土で作った大きな窯の中に、木を入れて火入れをし、窯の中で蒸し焼き状態にして炭化させます。その後、黒炭は窯の口を全て閉じて空気を遮断して消火し、窯が冷えたところで炭を取り出します。ところが白炭は、炭化の終わり頃に窯の口を開けて空気を送り込むのです。そうすると、窯内の炭化した木の表面や、木材中に含まれていた揮発成分に火がついて、一気に燃え上がり、窯内は1000度を超え、炭素以外の不純物が焼き尽くされます。そして頃合いを見はからってエブリと呼ばれる長い鉄製のカギ棒で、真っ赤な炭を窯から掻き出し、灰をかぶせて一気に酸素を遮断します。この工程で、備長炭は一気に締まって堅くなるのです。だいたい、元の重量の1/10ぐらいになります。また、表面が灰で白色になるので白炭と呼ばれています。

薪の写真

 白炭は、火の着く温度が高いため、なかなか火がつきませんが、一旦火がつくと、安定した火力で長時間燃え続け、遠赤外線も多く出るので焼き鳥や鰻などの焼き物に適しているのです。それに対して黒炭は、火が着きやすく、短時間に勢いよく高温で燃えます。刀鍛冶や、茶道で使われるのはこの黒炭です。
 炭の歴史は、今から1300年ほど前に、弘法大師が中国から製炭の技術を日本各地に伝えたことに始まります。その後、江戸時代に紀州で備長炭の製法が完成され、元禄年代(西暦1700年代)に紀州藩の炭問屋、備長屋長左衛門が江戸の問屋に送った炭が大変好評で、備長炭の名が江戸一円に広まり、一躍有名になったといわれています。
今、備長炭には大きく分けて、紀州、土佐、日向の3つの産地があります。その中でも、紀州備長炭は一番歴史が古く、土佐、日向には紀州の炭焼き職人が製法を伝えたのです。 紀州備長炭といえば、固くて、叩くと金属質のキーンと言う音のする、姥目樫を焼いた炭だといわれていますが、姥目樫だけではなく、青樫、黒樫、白樫などを焼いたものもあります。ただ、やはり姥目樫が一番目が詰まっていて硬質のいい炭になります。それは、姥目樫が他の樫に比べてもなかなか大きくならず、もともとの木質の目が詰まっているからです。ただ、その分生命力に富み、炭にするために枝を打っても、翌年にはその下から新しい芽が吹いているぐらいです。

三度も美味しい備長炭の使い道とは?!

 私はよく、備長炭は三度美味しい使い道があるんですよと説明しています。まず初めは飲み水をまろやかにするのに使います。水道水を水差し(ペットボトルでも可)に入れ、その中に備長炭を入れておくだけで美味しい水が生まれるのです。1ヶ月ほど使った後は、よく乾かしてから、食器棚や靴箱など、匂いの気になるところに置いたり、私は洗濯ネットに細かい炭を詰めて、湿気が気になる部屋につるしています。炭には、匂いを吸着する性質とともに、部屋の湿気が多い時は吸い、少ない時は吐き出すという、調湿作用があるのです。そこで、湿気が多い部屋につるしておくと、炭が湿気を吸い取ってくれるのです。壁一面に結露が…、というのは改善はし難いですが、たんすの裏に少しカビが…というレベルならかなり効果がありますよ。そしてその効果もなくなれば、最後には、バーベキューで燃料として使う。勿論、紀州備長炭の特徴である安定した火力が長持ちするので、ガス火で焼くよりも格段に美味しく焼き上がります。こうやって三度も生活の中で使えるものって、身の周りにはそうはないですよね。
 最後にちょっぴり私の自慢をば…。写真のものは私が考案した「備長炭のマドラー」。ウイスキーや焼酎などを飲む時に、普通のマドラーでかき混ぜるよりも、当然、備長炭ですからまろやかな味になります。さっと水洗いして乾かしておけば、何度でも使えますし、これも、先ほど述べたような後の利用が可能です。備長炭を使って水割りを作る――。どうです、考えただけでも美味しそうでしょ。
 備長炭はまだまだ利用方法があり、健康ランドやスーパー銭湯の壁材として、まるでタイルのように紀州備長炭を貼っているところもあるくらいです。そこでは、紀州備長炭の切り口の黒曜石のような美しさと、調湿性、匂いの吸収力を高く買ってもらって、導入したのです。銭湯といえばどうしても常に蒸気がこもり、どことなくかび臭いような匂いがしがちなのですが、紀州備長炭のおかげでそういったことも一切なく、しかも黒曜石のような見た目が高級感があると好評です。
 他には、炭の粉やくずを床下に敷き詰めて、防臭防湿剤として使ったりと、応用の範囲は広いですよ。
 私は、母が炭焼きを始めるまで、紀州備長炭との接点などまったくなかったのですが、一度その良さを知ってしまうと、のめりこんでしまったんです。ただ、こういった伝統的な世界は閉鎖的です。伝えるべき技も口伝で、窯の作り方さえきちんとした図面がなかったんですよ。そのあたりを始めて知った時は、エ〜ッ、ありえないと思ったのですが、例えば、空気穴は窯口から腕を入れて腕半分の長さのところに指四本分で、といったような大雑把さが、意外とどこの窯元に行ってもきちんと伝えられているんですね。そういうのを見聞きするにつれ、別にきっちりとした図面は必要ないのかなと思えるようになりました。その反面、一度この伝承が途絶えたら、それを復活させるのは並大抵のことではないだろうなと。ですから、今後は、できるだけこの技術を継いでくれる人を育てていきたいなと思っています。そのためには、まず紀州備長炭のよさを今以上にみなさんに知ってもらい、日常生活に取り入れてもらいたいなと思いますね。
皆さんも、百聞は一見にしかず、まずは紀州備長炭でまろやかになった水で、水割りを作って飲んでみてください。私がトレンドに、コレを推す意味が理解できるはずです。

備長炭のマドラーの写真

プロフィール

盛田 佳代(もりた かよ)

母方の祖父が和歌山で炭問屋をしていたが、自身は炭とはまったく無縁の生活をしていた。ところが10年前、祖母の介護を契機に和歌山へと転居した母が55歳にして炭焼きに目覚め、自力で窯を築いたり、山に入って木を切り出したりするに至って、何らかの手助けになればと、TSUGU&Co.を設立して紀州備長炭の販売を始めた。燃料としての備長炭だけでなく、その魅力を広くみんなに知ってもらいたいと、プチ枝炭や備長炭マドラーなどを提案している。

盛田佳代さんの写真

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