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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

11月のゲスト ヴィラージュ川端 オーナー・パティシエ 川端 繁隆 私が気になるもの フィナンシェのバリエーション

11月のゲストは奈良でケーキ屋さんを営む「ヴィラージュ川端」オーナー・パティシエの川端繁隆さんです。川端さんは関西のスイーツ業界の草分けでありながら、既存の考えに捕らわれずに、自分の考えを推し進めてきたベテラン・パティシエ。そんな川端さんが、現在、気になっているのはフィナンシェだそうです。古典的な焼き菓子に予想される新しい流れとは何でしょうか?

古きをたずねて新しきを知る。

 この仕事を長年やっていますが、洋菓子といえばフランス菓子を手始めに、イタリアやスペイン、イギリス、アメリカと、色んなお菓子が日本で売られており、だいたい行き渡ったかなというのが私の感想です。だからでしょうか、今回のトレンド候補に、今さらの感がある「フィナンシェ」を挙げました。「フィナンシェ」と言うのは皆さんも知っている通り、古典的なフランスの菓子で、バター生地を焼いたシンプルなプチ・ケーキです。
 これまで日本では、バウムクーヘンやクッキー、マドレーヌなどの焼き菓子に始まって、バタークリームのデコレーションケーキから生クリームのケーキへと、主流が移り変わってきました。そしてバブル経済の頃に、イタリアのティラミスが紹介されて爆発的なヒットとなり、その後カヌレ、クイニィアマン、マカロンと、色んな国や地域のスィーツが流行ってきたのです。ほとんどの人が、これらのお菓子がTVや雑誌で紹介されているのを見聞きしたり、実際に口にしたりしたことがあるのではないかと思います。
 これまでに流行ってきたお菓子というのは、どちらかといえばそれまで見たことのなかったもの。要するにその存在自体が目新しいものでした。でも、私が思うのは、これからはそういった目新しさだけに注目するのではなく、今ではすっかり定着して、平凡だと思われてしまっているものに脚光が当たるんではないかと考えています。

ケーキの写真

洋菓子の世界に示し続ける、新しい切り口。

 私がお菓子の業界に入ったきっかけは、伯父がお菓子屋へ材料を卸していた原料問屋を経営していたからです。当時は終戦の直後で、周りではまだ食うや食わずの生活をしている人たちも多くいました。そんな環境下で、もともと甘いものが好きだったこと、食べ物を作るところであれば、食うに困ることはないかなと思い、和菓子屋に修行に行ったんです。当然ですが、そこで和菓子の素材の扱いをみっちりと仕込まれました。そして、ある時、大阪に出かけ、初めて洋菓子に出会ったんです。私は今までになかった洋菓子に魅せられ、その世界に飛び込みました。そして何年か働いた後、技術習得のために横浜へ研修に行ったんですよ。
 横浜ではカルチャーショックを感じましたね。昭和30年代後半の関西の洋菓子はバタークリームが主流でしたが、東京辺りでは生クリームでデコレーションされたケーキが一般的になりつつあったんです。もう本当にびっくりですよ。「この軽い、美味しいクリームはなんだ!」っていう感じでした。そして関西に戻って、菓子の原料問屋をしていた伯父の経営する店で働くことになったのですが、その当時すでに絶対に生クリームのケーキを作る!と決めていましたね。
 昭和41年ごろには、生クリームを作れるほどの牛乳の質と生産量のある牧場は、西日本では九州の阿蘇にしかありませんでした。それに、今のような冷蔵による流通も整ってはおらず、国鉄(現在のJR)の夜行列車に氷詰めにして1斗缶の生クリームを乗せてもらい、それを翌日に受け取り、ケーキを作るといった状況でした。

ケーキと外観の写真

 それでも、珍しい生クリームを使った美味しいケーキが手に入るということで、店の前には開店前から人々が列を作って並び、1時間ほどで売切れてしまいました。私自身がやりたかった、「生で鮮度のいいものをお客さんに食べてもらいたい」という思いが時代に合致したんでしょうね。私たちが生クリームを使ったケーキを売り出してから半年ほどたって、大手のケーキメーカーも生クリームのケーキを売り出すようになったんですよ。
 そうそう、洋菓子に和三盆を初めて使ったのも、私らしいです。きっかけは、今から20〜30年前に依頼されて行った、徳島での洋菓子の講習会です。私は今で言うところの地産地消ということを、昔から行うようにしていました。その時も、何か徳島の特産品を使ったお菓子を紹介しようと色々考えて、和三盆を使うことを思いついたんです。私が昔、和菓子屋で修行したことがあったのも、和三盆を使ってみようと思えるきっかけの一つではあったでしょうね。和三盆の扱いもよくわかっていましたから。そんなわけで、和の素材を使った洋菓子もいけるという確信は自分自身の中にできました。そして、伯父の店を定年まで勤めて退職し、自分自身のこだわりを通した店造りに取り掛かったんです。
 自分の中でのスタンスは、はっきり決まっていました。素材は、できるだけ地元のものを使うこと。フルーツは有機栽培や無農薬、減農薬などの特別栽培品を使い、牛乳は岩手の中洞牧場のもの。生クリームは90%を牧草で飼育した牛のもので、無添加のものを釧路の牧場から取り寄せて、卵も特別飼育のものをと、細部にわたって私のこだわりを通しました。そのおかげかありがたいことに、甘いものは苦手だとか、生クリームが好きではないという方からも、うちのケーキなら食べられるという評判も頂戴しています。
 私は売れるものを作るというのではなく、私のこだわりを通し、やりたいことをやってきたのですが、たまたま時代と合っていたのでしょうね。ただ、常に新しいケーキの切り口を示してきたという自負はありますね。

面白い素材が、お菓子の可能性を広げる。

 長々と私の経歴を話しましたが、こんなベテラン・パティシエがこれから流行るものは「フィナンシェ」のようなお菓子だという思いに達したのです、ただ「フィナンシェ」といってもこれまで通りのものではないとは思います。
 少し前から、食べ慣れたものに少し変わった味を加えるものが現れてきました。その典型とも言えるのが、塩味のチョコレートだと思います。それ以外にも、スパイスの効いたものだとか、唐辛子が入って辛いものとか、いろいろな味変わりのものが目につくようになって来ましたよね。この夏は、塩キャラメルといって、塩味を感じるキャラメルのソースやお菓子などが市販されました。ただ、だからといって塩味の「フィナンシェ」だけが流行るとは思いません。
 ちょっと思いつくだけでも、ジンジャー、抹茶、黒砂糖といった味のバリエーションが考えつきます。先ほど述べた塩キャラメル味のものも面白いでしょう。これらの味の変化に加えて、これから重視されてくるのは、その味をつけている素材の質でしょうね。例えばシナモン。今までのシナモンは、ちょっと粉っぽい、昔ながらのニッキのイメージの強い香りでしたが、質のいい物になってくると、甘い香りが芳醇で、これを「フィナンシェ」に入れたらどんなに美味しいだろうかと考えていくと、段々と想像がふくらんでくるんですよ。
 今まで「フィナンシェ」はバターの香りを楽しむお菓子とされていたので、あまり香りのある素材を合わせることはなかったです。でも、質のいい面白い素材が出てくると、お互いが引き合うようにひっつけられます。今までに洋菓子や和菓子に使っていた素材がほとんどでしたが、これからは広く料理の世界の範疇からも素材を取り入れ、アレッ?!といった面白い物が出てくると思いますよ。

ショーケースに並ぶケーキの写真

プロフィール

川端 繁隆(かわばた しげたか)

関西の洋菓子界にいち早く生クリームを取り入れたり、和三盆を使ったスィーツを考案したりと、常に新しい方向性を切り開く、関西の洋菓子界の重鎮。有機、無、低農薬のフルーツや無添加にこだわって、素材を大切にする、安全と美味しさがテーマのケーキは、あっさりとしていながら、食べた後に心に残る。18種類の砂糖、岩手から取り寄せる牛乳、特別に飼われている鶏の卵などを駆使して生み出されるケーキは、素材の味を楽しめ、かつ、ありがちな特有の匂いを感じさせないようにバニラを用いないなど、驚かされることも多い。

川端繁隆さんの写真

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