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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

3月のゲスト 信田尚男 株式会社和泉利器製作所 私が気になるもの こだわりの道具

3月のゲストは「堺刀司(さかいとうじ)」のブランドで、包丁などのキッチン周りの製品を製造、販売している「和泉利器」の信田尚男さんです。団塊の世代が余暇を楽しむ時代に突入し、色んなものにチャレンジする人が増えてきています。日々、調理売場に顔を出していると、そんな世代の人たちが道具を探す光景に遭遇するそうです。そこで今回は「こだわり道具」をトレンド候補に挙げてくれました。さて、その理由はいかに・・・。

道具にかける情熱

 団塊の世代の大量退職が世間の耳目を集め、退職した後の余暇の楽しみ方が、雑誌やTVなどで沢山紹介されています。団塊の世代といえば、高度経済成長期の日本を支え、働き蜂や、モーレツ社員など数々の形容詞を付けられた世代です。その人たちが余暇を楽しむ時代になってきたことにより、目立つのが「物へのこだわり」でしょうね。
 最近、某百貨店の紳士物専門館がオープンしました。その中には、一般的な価格の物もあるのですが、1つ100万円のオーダーメーイドのバッグや、数十万円のバッグなどもあり、それらがごくごく普通に買われていくんですよね。それから、今までなら表に出ることのなかった、有名ブランドの下請けのメーカーが作った、上質の素材でしっかりと作られた財布など。そういったものを、金額を気にせず買っていくのを見ていると、みんな自分だけの何かを求めている感じがします。そして、その流れは調理器具を扱う現場にも確実に押し寄せています。
 今の世の中、自分のための包丁を買おうと思えば、それこそ100円ショップでも十分当座の役に立つものを買うことができます。勿論、その包丁が長持ちするかとか、何度も砥石で砥いでいく使用に耐え得るものであるのか、ということを別にすればの話ですが…。100円ショップほど安くはなくとも、近所の金物屋やスーパーなら十分に手頃な価格で、そこそこ長く使えるいいものが手に入ると思います。ところが、なぜか東京の合羽橋(かっぱばし)や、大阪の道具屋筋(どうぐやすじ)に出かけてまで、自分だけの包丁を手に入れようとする人が多くいるのです。
 また、大人の男の愉しみとして、最近とみに人気を集めているのが蕎麦打ち。熟練の技を必要とするといわれるそば打が代表例。粉へ水を浸透させていく「水回し」や、粉を大きな塊にして練っていく「菊もみ」、生地を丸く伸ばしてから四角く角を出して伸していく「四つだし」などなど…。そういった職人技への憧れがあるのでしょうか、蕎麦打ちを教える道場まで現れています。
 そこで技術を習得すると、次には道具に拘り出すのです。捏ね鉢は国産のセンの木で漆塗り仕上げ。のし棒は手の大きさに合わせて太いものから細いものまでありますし、蕎麦切り包丁は刃の素材、柄の素材と、凝るポイントは盛り沢山です。その他にも伸し板や、蕎麦を切る時に生地を押さえるコマ板だって、凝れば、どんどんとランクが上がっていくんですよ。一事が万事で、今、余暇に料理を楽しもうとしている人は、道具にどんどんと投資をしています。

蕎麦切り包丁と道具の写真

アウトドアクッキングにも押し寄せる、凝り性の波

 実は、私は小学生の頃からボーイスカウトに参加しているんです。今でも、その頃の先輩や、後輩が集まって春には同窓会を、夏にはキャンプをするほど、その繋がりは深いです。その活動を通じて学んだものは多いですね。 だから、そんな経験を買われて、参加しているグループで行われる、アウトドアクッキングのイベントの企画をすることも多いのです。

包丁の写真

 私がボーイスカウトで学んだ飯盒炊爨(はんごうすいさん)は、あくまでもキャンプの一環で、今の華やかなアウトドアクッキングとはひと味もふた味も違うなぁと、しみじみと思います。まぁ、イベントなので、主催者側の私たちが準備をするのですが、私たちは昔ながらの、かまどを作って、木と木をこすり合わせて火を起こし…、といった方法を教えるんですね。参加者の人たちは、その方法で準備をして料理をするわけです。その横で、参加者とは違うグループは、高価なキャンプ用品を一杯並べて、アウトドア用のガスコンロで料理をしているんです。けれども、私たちのイベントのほうも、飯盒(はんごう)でご飯を炊くだけでは盛り上がりに欠けるので、ドラム缶を縦半分に切った中で炭で火を起こし、上に大きな鉄板を載せ、そこで鮭一匹を使ったチャンチャン焼きをプロの料理人に作ってもらったりするんですよね。まあ、楽しみのために来ているんだから、どんな高級機材を使おうと、どんな手の込んだ料理を作ろうと、全く構わないんですが、ボーイスカウト育ちの私は、なんか違う気がするなと、思ってしまいます。でも、そういう風に、色んな道具に凝る人たちがいてこそ、色んな道具が売れているわけですから、マーケットの活性のためにはいいことなんですよね。そう考えると、凝ると決めたらトコトン凝るのも、いいことかもしれません。

小技で自分らしさも演出

 道具への拘りも、だんだんと変化していっているようですね。ちょっと前なら、最高級の包丁を買い求めていたであろう人たちが、今は単なる最高級では満足しません。ちょっと変わった鋼素材、例えば刀身に波目模様の浮き出たダマスカス鋼で作られた包丁を求めたり、包丁の柄に黒檀と象牙を使ったものを求めたりします。また、既製品に飽き足りない人たちは、自分だけの唯一の物を求めるようになってきましたね。洋包丁に、和包丁の柄を付けたり、その逆で和包丁に洋包丁の柄を付けたり…。和包丁の柄を付けるのは比較的やりやすいのですが、和包丁に洋包丁の柄を付ける時は、包丁全体を一から打たないといけないので、かなり高いものにつきます。他にも、柄に螺鈿(らでん)を埋め込んで模様を描いたりと、本当に自分だけの一本が欲しいようですね。  マーケットの方も、お客さんの「自分らしさを表現した物が欲しい」という欲求に気づいたのか、そういった対応ができるところもボツボツ出てきたようですね。こうして見ていくと、この傾向は、今後ますます進んでいくんじゃないでしょうか。そういう意味からも「こだわり道具」がこれからのトレンドになると思いますよ。

包丁の写真

プロフィール

信田 尚男(しのだ ひさお)

文化2年(1805年)創業という、200余年続く「堺刀司(さかいとうじ)」ブランドの刃物屋株式会社和泉利器の8代目。ボーイスカウトでならした腕を発揮してアウトドアクッキングのイベントを企画したり、小学校の食育プログラムの作成に参加したりと、広く食周りの啓蒙にも力を注ぐ。知識を与えることに偏りがちな現在の食にまつわる現状に警鐘を鳴らし、実際に自分の手で作る経験も重要と訴える。

信田尚男さんの写真

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