サントリーグルメガイド全国版

サイトマップ

勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

8月のゲスト 酒井志朗 株式会社 あづき工房 代表 私が気になるもの 和菓子発のスイーツ

8月のゲストは創業60余年という老舗製餡業の酒井志朗さんです。美味しいあんこをもっと食べてほしいと和菓子屋「あづき工房」を15年前にオープン。しかし、“スイーツ”という言葉がメジャーになった今、常に注目を浴びるのは洋菓子ばかりだと嘆きます。今や和素材である抹茶やきな粉、ごま、そしてあんこまでもが、洋菓子に使われるようになり“和スイーツ”なるものが数多く登場しているのが現状。そんな状況下で酒井さんが推奨するのは逆発想の和菓子スイーツ。さてどんな論理なのでしょうか。

美味しい“あんこ”、知ってますか?

 日本人、特に若い人は和菓子やあんこを食べなくなりました。それは中国からの砂糖がたっぷりと入った加糖餡しか食べたことがないからなのかもしれません。小豆の味わいがする本当に美味しいあんこの味を知っている人がどんどん減っているのです。これはとても悲しいことではないでしょうか。「食育」という考え方が注目され、日本ならではの食文化を守ろうという観点から考えると、日本の文化であるあんこを使った和菓子が日常からどんどん消えていっているということなのですから。
 約40年近く、あんこを作る製餡業をしていますが、東と西ではあんこの文化が異なります。関東では羊羹や最中、しるこなどのこしあんがよく売れ、大阪では餅、赤飯、大福、おはぎといったつぶあんを使ったものが年中よく売れました。でも、今では都会ほど、こういったものが全く売れなくなってしまったんです。特に関東では、いわゆる、薄皮饅頭や蒸し饅頭といったこしあんの入った饅頭が売れないそうです。それに代わってよく売れるようになったものが、いちご大福や生チョコ大福、ミニ大福といったものです。つまり、日常的な和菓子ではなく、非日常的なスイーツ感覚のデザート和菓子が都市部では重宝されるようになったのです。それでも、美味しいあんこの味を伝えたいとの想いから、15年前に「あづき工房」という和菓子屋をオープンしました。
 ここ数年、洋菓子にあんこや抹茶、きなこなどの和の素材を取り入れたものが増えてきました。それらは消費者に違和感なく受け入れられ、今では抹茶パフェといったら、定番にまでになりました。でも、その逆は少し難しいのが現状です。つまり、和菓子に洋の素材を入れること。これは、なかなか受け入れられないのです。例えば、おはぎに生クリームを入れる、あんこにバターを加えるという手もありますが、これだと、気持ち悪いとすら言われてしまうのではないでしょうか。生クリームやバターといった油脂分がせっかくのヘルシーな和菓子のイメージを変えてしまうからなのかもしれません。昔から和菓子を食べている人はクリームやバターを和菓子に求めてはいないんですね。

あづき工房の写真

産地と美味しさの微妙な関係

 最近、産地偽装の問題が多くなりました。産地の偽装は決してしてはいけないことです。「あづき工房」で用いるあんこの材料、つまり小豆は北海道・十勝の音更町のものをメインに使っています。でも、十勝産という表示はしていません。というのも、小豆は生ものなので、毎年、出来不出来があります。十勝ではなく、その隣の旭川の方がずっと美味しい小豆ができる年もあるのです。「十勝」といった方が消費者は喜んで買うのかもしれません。でも、私は他地のものがいいと判断すれば、あえて十勝産以外の小豆を使います。それは、より美味しいものをお客さんに食べてほしいからです。それが、あんこ屋のプライドだと思っています。そのため、「十勝」という表示をしないことにしているのです。

あづき工房の写真

 消費者は年によっては違う地の方が美味しい小豆がとれるという事実をもう一度考えてみてほしいですね。また、外国産のものも一概に悪いと決め付けるのも問題があるのではないでしょうか。今や、技術開発も進み、外国でも国産と同等の品質のものがよりリーズナブルに作られていたりするんです。「あづき工房」では毎年、様々な小豆を食べ比べし、プロの目利きで厳選した小豆を選んでいます。そのために、今では「十勝産」という表示はしなくなったのです。いちご大福も同じです。いちごの醍醐味は酸味と甘味のバランスにあります。「あづき工房」では少し酸味のある徳島のいちごをメインに使っていますが、季節毎に応じて全国のいちごの中から、うちのあんこに合ういちごを選んでいるんです。
 確かに、産地に対する信頼は大きなものです。しかし、それに惑わされてはいけないと思いませんか。産地ではなく、「ここのだったら大丈夫」という信頼してもらえる店作り、安心してもらえる店作りを目指しています。また、お客さんももっと自分の舌を信じることが大切です。究極のところ、産地や店のブランドや値段ではなく、自分で美味しいと思えるものが一番ではないでしょうか。

美味しいあんこを守りたい

 美味しいあんこが日本から少しずつ消えていっています。30年前、大阪に43軒あったあんこ屋は今では20軒になってしまいました。また、残った店の多くには後継者がいないのも悩みの種です。技術者としての資格や免許はありませんが、私はあんこは日本の伝統文化だと思っています。このあんこを次世代にも残していくことが私の使命だとも感じています。本当に美味しいあんこの味を知ってもらいたいのです。
 そのためのひとつの案としては、ライバルである洋菓子への挑戦です。革新的な洋菓子に対して、古典的な和菓子という縮図が出来上がってしまったという現実を真摯に捉え、和菓子屋がやっと重い腰を上げ、新しい和菓子に挑戦しています。
 例えば、日常的に親しまれる和菓子だけでなく、ケーキやクッキーのように手土産やギフトにも使える和菓子にさらに力を注いでいるのです。あんこ屋であることに自信と誇りを持って、高品質ブランドへ挑戦したいと思っているんです。日常のおやつとしては食べる人が少なくなってしまった羊羹ですが、1本2000円のすごく美味しい高級羊羹を手土産にするなんていかがですか。勿論、パッケージも和モダンなものに仕上げます。
 また、若い世代、特に女性に好まれるような和菓子スイーツへもチャレンジします。百貨店でも洋菓子売り場には多くの人でごったがえしています。一方、和菓子のゾーンにはお客さんがぜんぜんいないんです。洋菓子は華やかで、和菓子は地味。そんなイメージを払拭したいですね。初めは洋菓子売り場に進出できるような本格和スイーツがスタートです。今までは洋菓子屋が和素材を使っていましたが、あんこや抹茶、きなこなどを本当によく知っているのは和菓子屋だとは思いませんか。和菓子屋が和素材の製法を駆使して、和菓子発のスイーツを作るんです。
 手土産として人気のロールケーキもきなこやきんつばを使ったお茶にもよく合うテイストに仕上げたり、黒糖やきなこのフィナンシェなどアイデアは豊富にあります。また、正統派すぎるパッケージにも改善点がありそうです。おしゃれなラッピングや、もらって嬉しい包装形態をと考えると、いくらでもプランは膨らむはず。
 大阪では、この春、老舗の和菓子屋が生のフルーツが載った変わり団子や、野菜のピューレがのった洋テイストの団子屋がオープンしました。しかも、狙ったのは若い人が多く集まる中心部です。ネーミングも横文字、店舗デザインも今までの和菓子屋のイメージを覆すモダンでスタイリッシュなものです。でも、それらのアイテムは話題性はありますが、結局売れているのは、みたらしやよもぎ、小倉などベーシックな団子が多いそうです。それでも、注目度の低かった和菓子に話題性ができたことは素晴らしいことではないでしょうか。
 また、伝統や歴史といった中で新しいことに挑戦してこなかった和菓子屋がとうとう新しいことをしはじめたことも大きな第一歩だと思っています。だから、これからのトレンドは和菓子発のスイーツにあると言いたいですね。

和モダンパッケーシの写真

プロフィール

酒井 志朗(さかい しろう)

創業60余年という老舗製餡会社の2代目。あんこ屋さんが減りつつあること、また伝統と歴史のあるあんこを作る後継者が少ない現実を嘆きながらも、和菓子の未来に向かって、新しいチャレンジを仕掛ける。15年前にオープンした美味しいあんこと和菓子のアンテナショップでもある「あづき工房」は現在3店舗。手間隙かけた作りたての美味しさを楽しんでほしいと、展開を図っている。丁稚まんじゅうやいちご大福などの定番人気商品の他に、常に新しい美味しさを求めて商品開発を行っている。

酒井 志朗さんの写真

このページの先頭へ

バックナンバー
コンフィチュール(ジャム)柚子胡椒団子大阪の文化徳島県の農産物韓国のお国事情神戸らしい和菓子アメリカの食事情手作りバームクーヘン歴史を背負った新人的な街海藻のタルタル地方産のエビエコロ米ターメリックマグロの将来マシュマロなにわの魚菜調理法による減塩効果つけ麺の全国化発酵食品ソースカツ丼食器と遊び心ジャガイモの未来切子の日常使い手軽に食べられる本格派スイーツ熊本食引き算をしないヘルシー料理術食住一体型飲食店シングルモルトのマリアージュ弁当箱しゃぶしゃぶの麺つゆだれ海鮮丼松江おでん小さな市場(しじょう)の復権色々な味噌漬け和風キムチ新感覚アウトドア和菓子発のスイーツカッコいいひとり呑みスープブレンド粉食農教育こだわりの道具ハンガリー料理家庭の中のテーブルコーディネート野菜パフェフィナンシェのバリエーション紀州備長炭ドクターズ・レストラン温泉たまご摘み菜空飛ぶマグロ肥前あさくさ海苔ワンプレート・フード地元のお母さんの味森のような空間を持つレストラン猪肉(ボタン鍋)酒を飲みながらの団塊世代ライブこんにゃくそば黒糖と豆のマッチング卵かけご飯魚醤球形で黄金色したズッキーニ美的アクセントのあるモノかわいい形(色)のトマト黒豚バークシャー丹後のオイルサーディンエイシー美味しい"ずるさ"のおすそわけミルキークィーン永田農法の野菜無農薬・有機栽培の雑穀ホルモン焼きうどんマンチェゴ日向地鶏のもも焼き

全国版オススメ特集