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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

1月のゲスト 梅原 沙織 フォトグラファー 私が気になるもの ソースカツ丼

今年最初のゲストは若きフォトグラファーとしてめきめき力をつけてきている梅原沙織さん。高知県出身で、関西でも活躍する彼女がトレンド候補に挙げてくれたのが自身とは縁りのない福井県の郷土食。同県でスタンダードになっているソースカツ丼に注目しているそうです。では、福井で食せるソースカツ丼とはどんなものか、そしてトレンド候補たる理由とは何なのかを語ってもらいましょう。

海鮮丼より個性的な丼

 最近は御当地グルメという言葉がよく聞かれるようになりました。テレビ番組でもその手のものをよく紹介しているために、近頃は御当地グルメを目的に旅する人が多いと聞いています。御当地グルメとは、ある地域独特の食べ物のことで、あまりのマニアックさのために、これまで全国的に広がらなかったもの。それが「B-1グルメ」や各県の特徴をテーマにしたテレビ番組などの影響でいきなり脚光を浴び始め、いつしか食のブームに成長したのです。
 この手の食べ物は、どちらかというとB級グルメが多く、特に丼物は作りやすいのか、ユニークなものが多々見られます。私が北陸を旅した時に発見したのは、甘エビの丼。ごはんの上にズラリと甘エビを並べたものですが、さすがに海辺にあるために、その鮮度は良く、味も上々でした。東京や大阪なら少ししか甘エビが載っていないのですが、北陸の漁師町だけあって、ごはんが見えないくらい甘エビが並んでいます。
店の人に聞くと、漁港から直接入荷するとのことで、大きなエビの時は10匹、小さなものになると15匹も載るそうです。北陸や丹後、山陰を旅すると、こういった海鮮丼を名物に売り出している所が多く、私もついついその手の料理を注文してしまいます。ところが、同じ北陸でも福井に行くと、海鮮系丼よりもカツ丼に目が行ってしまうから不思議です。

甘エビの丼の写真

ソースカツ丼がスタンダードに

 なぜカツ丼かというと、福井ではソースカツ丼がポピュラーで、その専門店まであるほど。全国どこの町でも飲食店に入って「カツ丼」と注文すると、卵でカツをとじたものが出て来ます。よく刑事ドラマで、取り調べ室で出される、いわゆるカツ丼のことです。それが、福井県の場合はちょっと違って来るのです。

カツ丼とソースカツ丼の写真

 福井県でいうカツ丼とはソースカツ丼のこと。だから同県では「カツ丼」と注文しても卵がとじた例のものが出てくることはありません。ある所で話を聞くと、極端な場合、福井の人は卵でとじたカツ丼を知らない人もいるのだとか。私も某店で「関西では、カツ丼は卵でとじたものらしいですね」と不思議そうに聞かれたことがあるくらいです。
 ソースカツ丼は、東京や大阪にも存在します。それはごはんの上に千切りキャベツを敷き、その上にカツを載せ、とんかつソース(時にはウスターソースの場合もある)をかけたものを指します。けれど、私が食べた福井のソースカツ丼は、串カツに使うようなソースにカツをくぐらせ、それをごはんの上に載せて提供していました。店によってソースの味に違いがあるようで、それによって特徴を出していると聞いています。カツも1枚ではなく、最低2枚以上、所によっては4枚も載っているのがあります。概して1枚は薄めにしてあり、揚げたてを出してくれるのです。

早稲田生まれの福井育ち

 では、なぜ福井県でソースカツ丼がスタンダードな県民食になったのかと言うと、その起源は関東大震災の頃まで遡るそうです。明治時代にベルリンの日本人倶楽部で修業した高畠増太郎氏が生みの親で、ドイツで覚えたソースを日本人向けに使えないかと考えたのがきっかけのようです。
 同氏は大正時代に東京の早稲田鶴巻町で開業した店で、このソースカツ丼をメニューとして出していました。ところが関東大震災が起こり、それをきっかけに郷里の福井へ帰ってしまったのです。
 福井の繁華街・片町で「ヨーロッパ軒」をオープンした彼は、その店でソースカツ丼を出したところ、またたく間に評判を呼び、いつしかそのメニューが看板となったと聞いています。その評判に乗じて、同じようなメニューを出す店が県内で現れ始め、いつしか福井県の味として定着。今では卵でとじたカツ丼をおさえ、スタンダードな県民食にまで成長しています。ちなみに私達がよく食している一般的なカツ丼はないのかといえば、さにあらず。そば屋などでは「玉子カツ丼」という名前で、細々(?)と売られているそうです。
 この話でわかるように福井県はかなり個性的な県。郷土料理として「サバのへしこ」や「浜焼きサバ」「たくあんの旨煮」などがあり、辛味大根をダシに入れて食べる「越前おろしそば」はその中でも最も有名なもの。最近はこの越前おろしそばとソースカツ丼の二大名物をいっしょに食してもらおうとの考えからセットにして出している店も多いようです。ソースカツ丼はそば屋でも、とんかつ屋でも、食堂でも県内の店ならどこでも味わえるようになっています。
 これだけ色んな店で出しているので、各店とも独自の特徴を持たせようと必死で、某店では夏と冬ではソースの配合を変えるほどのこだわり方を。夏場はやや辛めにし、冬場は甘みをアップさせることで、気候や体感温度に対応しています。このようにちょっとした味の変化をつけることで、より美味しく感じてもらうための努力が窺えるのです。
 ソースカツ丼にしろ、越前おろしそばにしろ、羽二重餅にしろ、福井独特の食文化が育つのは同県民の郷土愛が強いから。その証拠に車を走らせると、ロードサイドには全国チェーン店が少なく、地元の店が繁盛しているのを感じます。全国どこを切っても金太郎飴状態になっていることを考えると、独自の食文化を持った稀有な県のようですね。皆さんも一度、福井県に行ったら迷わずソースカツ丼を食してみてください。

ソースカツ丼の写真

プロフィール

梅原 沙織(うめばら さおり)

高知県出身の女性フォトグラファー。写真専門学校で、フォトグラファーの近藤宏樹氏のポスターを発見し、同氏が経営するリアルフォトグラフィの門を叩いた。「カメラマンになりたかったのはイチローの写真を撮りたかったから」とミーハーな一面も見せる。師匠の近藤氏がイチローを撮影しており、入門するやすぐにその現場に足を踏み入れることができたそうだ。現在、スポーツの他に、医学業界の写真を撮影。食については雑誌の仕事として撮ることが多いそうだ。

梅原 沙織さんの写真

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