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| 四川や、韓国、インド、タイなどアジアには、辛みを求める食文化があります。それに比べて日本料理には辛みに特徴のある料理が少ないようですね。こと薄味が特色の京懐石では、途中に辛みのある一品を挟んでしまうと、味がその後わからなくなってしまうために、あえて強い香辛料を用いたりしていません。唯一、あるとすれば、刺身にワサビをつけるぐらい。ワサビについては毒消しの意味もあって、よく用います。 こうは言ってみるものの、日本料理が辛みを欲しないかというとそうではありません。塩コショウは多用していますし、唐辛子を使った料理もあります。その上、ワサビ、生姜といった香辛料もよく使われています。 私が気になるものとして挙げる柚子胡椒も和食で用いる香辛料のひとつ。柚子胡椒自体は、九州でよく用いられる薬味で、全国的にみると、あまりなじみのない地域もあるかもしれません。柚子の皮を細かく刻んで、唐辛子と塩をすり合わせて作ります。柚子が原材料となっているので、香りがよく、ピリッとした辛みととても爽やかな香りが印象的です。名称に“胡椒”と付いてはいますが、一般でいうコショウは用いられていません。九州の一部地域では、昔から唐辛子のことを“コショウ”と呼んでいるらしく、作る際に柚子の表皮と唐辛子を使うことから“柚子胡椒”と称するようになったそうです。 |
一口に柚子胡椒といっても青・赤・黄の3種が存在します。最もポピュラーなのは、青柚子胡椒で、これは青柚子と青唐辛子の組み合わせからできたもの。フレッシュで、辛みがきつくないために、汎用性があります。一方、黄色柚子と赤唐辛子で作る赤柚子胡椒は、辛みが強いため、ほんの少しだけ使っても特徴的な辛さを味わうことができます。あと黄色柚子と黄唐辛子の組み合わせによる黄柚子胡椒というのがありますが、これは時期と数量に限りがあるために、量販店では見かけることが少ないようですね。
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| 柚子胡椒をよく用いるのは鍋料理。鍋からスープを取り出し、そこに入れるだけで、柚子の香りと独特の辛みが楽しめます。そのために西日本の料理屋では鍋の薬味としてよく提供されています。その他に団子汁やうどん、味噌汁にも使われるため、どちらかというと汁系料理の薬味と誤解されそうですが、実はワサビのような使い方で刺身につけて食べても美味しいのです。魚だけでなく、同様の使い方で焼き鳥や焼肉につけて食す人も少なくありません。 一見、和食の調味料のように思われがちですが、意外にもエスニック料理との相性も抜群で、柚子胡椒を入れて味付けすると、いつものエスニック料理と違った風味が楽しめます。
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先日、私が主宰する料理教室では、「鶏と夏野菜のココナッツミルク煮」と「玉ネギと海老のエスニックサラダ」を教えたのですが、この2品にも柚子胡椒を用いました。前者はグリーンカレーっぽい味のもので、辛みとココナッツミルクの味が効いています。普段なら使わない柚子胡椒で辛みを持たすと、いつものそれよりクセがない、上品な味に仕上がります。この手の料理は辛みの強い赤柚子胡椒の方が合うようです。ただ煮込みすぎると、せっかくの風味が消えてしまいますので、仕上げに入れる程度がいいですね。 片や「玉ネギと海老のエスニックサラダ」は、玉ネギと柚子胡椒、酢、砂糖、ナンプラー(なければ塩で)を混ぜて作ります。これらが混ざり、しんなりしてきたら茹でた海老を入れます。パクチーとパプリカを彩りと香りを楽しむ意味で加えれば完成。どこから見ても正真正銘のエスニック料理なのですが、食べると、柚子胡椒の味と香りがし、いつもの一皿とは違った趣が楽しめます。エスニック料理はクセがあるから苦手という人がいますが、そんな人にこそ、柚子胡椒を使うことをオススメしたいですね。柑橘系の爽やかな香りが独特のクセを消してくれますし、何より上品な味わいになるのがいいですね。 |
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| もっと意外なものではパンケーキに用いること。「お菓子に辛みのある調味料を使うなんて!」と思うかもしれませんが、逆に甘さが引き立つようになるんですよ。これはスイカに塩をかけて食べたり、一時期流行った塩キャラメルや塩チョコレートの理論に近いものがあるかもしれません。粉ではなく、卵と牛乳や、卵とココナッツミルクのように液状になったものに柚子胡椒を混ぜて作ります。小さじ1/3〜1/2ぐらいで十分。隠し味に使うのでそんなに多くは入れません。粉や牛乳の分量に対して少ないので、柚子胡椒の辛みが出てくることはなく、むしろ甘みを引き立てる役割を果たしてくれるのです。 甘いものではクッキーを作る時の隠し味として役立たせても面白いでしょうし、一般の料理ではクリームシチューに入れてもいいでしょう。 最近は洋食といえどもひと頃のようにコテコテしたヘビーな味わいのものが減り、どちらかというと、あっさり系のヘルシー路線を突き進んでいるように感じます。そうなってくれば、和の調味料が活躍してもおかしくはありません。日本の調味料は種類も多く、香りや旨みのいいものが沢山ありますから、ボーダレスに使ってほしいですね。 |
最後にひとつ、私なりの柚子胡椒の保存法を伝授しましょう。一瓶買っても、どうしても使う量が限られていますから、一度の食事ではなかなか減らないのも事実。そんな時は冷凍庫に入れて保存すること。冷蔵庫だと、香りも飛んでしまいますし、早く劣化します。その点、冷凍庫だと日持ちもするのでいいです。おまけに固まらず、シャーベット状になっていますので解凍する必要もありません。シャーベット状の柚子胡椒を好みの分量だけ掬(すく)って使えばいいのです。シャーベット状のものが溶けた時には、いい香りが漂うので、より美味しく感じるはず。このように保存しておいて、汎用性を広げてやれば、柚子胡椒の活躍の場が広がり、もっともっとポピュラーな調味料に成長すると思いますよ。
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