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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

9月のゲスト 中原 航 グラフィックデザイナー 私が気になるもの コンフィチュール(ジャム)

9月はグラフィックデザイナーの中原航さんがゲストです。中原さんは出版社に在籍していた時に、日本料理の専門誌のデザイン・レイアウトを担当しており、料理業界にも精通しています。そんな彼が、神戸の食文化を垣間見る中で、「コンフィチュールの展開に注目すべし」と話しています。専門店や旅館の土産物、地方の町興しの例を示しながら神戸のジャムについて述べてくれました。

神戸はパンとジャムにこだわりが強い町

 兵庫県には大きく分けて二つの文化圏が存在します。百万人都市である神戸を中心とした阪神側と、姫路を中心の播州側がそのふたつ。それぞれが違った文化を作り上げていると言っても過言ではありません。姫路生まれの私がこの文化の違いについて顕著に思うのがパン食へのこだわりの強さ。特に神戸はパン文化の発祥の地とあって、市民の多くが美味しいパンへのこだわりが強いようですね。
 日本では鎖国が終わると、横浜や神戸でパンづくりが行われ出しました。神戸では明治2年頃には、すでに居留地でイギリス人やフランス人が開いたパン屋ができており、外国船の船員や駐留する外国人に向けて商売が行われていたと聞きます。こんな経緯があるからか、神戸の人のパン好きは有名です。平成11年度の調査では、パンの都市別年間購入量は全国第1位。それに小学校の給食でもパン食が用いられたのは神戸が最初のようです。先日、神戸っ子がパン好きな証拠を見つけました。それは海岸通り(神戸市中央区)にある某カフェで食事した時のこと。カレーを注文すると、なんとカレーライスとともに手作りパンが出てきたのです。パンは甘めの、いわゆる菓子パンぽいもの。つまりこの店はカレーライスを食した後に、パンをおやつにして食べてほしいと考えていたのでしょう。それを出された神戸っ子はカレーライスに、パンという不思議な組み合わせを、躊躇せずに食べていました。まさにパン好き市民だから許せるランチなのでしょうね。
 前置きが長くなりました。私が今回トレンド候補に挙げたいのは、そんなパン好き神戸っ子が愛用するジャム。市民全体がパン好きなだけにジャムへのこだわりもひとしお。これまたお気に入りのジャムがあるようで、朝食の友としてこだわりのジャムを買い求める人も多いと聞きます。
 私はジャムといえば、トーストに塗るものとして理解しているのですが、あながち朝食の利用だけでなく、その汎用性は広いようです。面白かったのは、神戸・元町にある某中華料理店に行った時のこと。ビールをグラスに注ぎ、中華料理をアテに一杯飲っていると、店主が「梅ジャムを作ったので、食べないか」と言って来るではありませんか。「ビールに、ジャム?!」と不思議に思ったのですが、鶏の唐揚げにつけて食べると、これが美味!梅の酸味にジャムの甘さが加わり、いつもの唐揚げとは一風変わった料理になっていました。店主に聞くと、梅の実が成る季節に作るのだとか。1年分作り置きするらしいのですが、あまりの旨さからか、「一年もったためしがない」と話していました。まさに手作り感のあるジャムは、料理にもフィット。添加物を加えていないので安心ですし、何よりこんなに料理に合うとは驚きです。その店では、梅ジャムの他に、アプリコットジャムも作っているらしく、唐揚げの他にも料理の味付けに利用しているそうです。

ジャムの写真

土産物に続々と、ピュアなジャムが登場

 そういえば、このところお土産物としてジャムをもらうことが多くなりました。スキー場で知られる神鍋高原(兵庫)近くの日高町では、町興しにジャムが一役買っているそうです。地元の女性たち(マロニエ加工グループ)が作るこのジャムは、食育の第一人者で料理研究家の坂本廣子さんが指導したもの。食品添加物を使用していないのが売りです。この日高町のジャムはやや甘めですが、そのピュアさに人気を呼んでいるそうです。ちなみにこのジャムの開発に関わった坂本廣子先生も生粋の神戸っ子なんですよ。

御所別墅ジャムと御所別墅外観の写真

 神戸には六甲山の裏側の日本の三大温泉に数えられている有馬温泉があります。有馬温泉というと、観光カリスマの金井啓修氏(「御所坊」主人)の活躍ぶりが有名ですが、その「御所坊」の姉妹旅館にあたる「御所別墅」(ごしょべっしょ)でもジャムを作っていました。このジャムは季節によって素材が異なるそうです。私が見つけた夏場にはオレンジとすももの2種が売られていました。同旅館の和田さんの話では、「このジャムは『御所別墅』の朝食に出しているのと同じもので、ロビーに置いていると、お土産に買って帰る人が多い」とか。パンに塗ってみると、ジャムというよりフルーツを載せて食べている感じ。まさにピュアな味が手作り感を醸し出しています。ジャムというと苺が定番ですが、「御所別墅」では、その季節じゃないと作っていないそうで、それが余計に価値をあげています。苺の時季になると、有馬温泉から程近い二郎(苺の産地)のものを使って作るそうなので、次回はぜひその時期に訪れたいものです。

コンフィチュールと呼び名を変え、さらにオシャレに

 私がこのように「ジャムに注目すべき」と語っていると、最近、巷ではコンフィチュールの店が受けているとの話を耳にしました。コンフィチュールとは、フランス語でジャムを意味します。つまり英語読みがジャムで、フランス語読みがコンフィチュールなのですが、なぜかジャム屋さんというより、コンフィチュールショップという方が何となくオシャレ感があるようです。この流行は銀座に「コンフィチュール・エ・プロヴァンス」がオープンしてからのもので、それが雑誌などで紹介されるや、全国のあちらこちらで、その手の店が産声をあげました。
 今年7月に湊川神社(神戸市中央区)近くにオープンした「Confiture Kajyu KOBE(コンフィチュール・カジュー・コウベ)」もそのひとつ。可愛らしい店舗には、常時14〜17種ぐらいのジャムが並んでいます。商品は47gの小瓶と160gの瓶があり、棚に何種類も並んでいると、ジャムだけに彩りがよく、オシャレな雰囲気が漂います。
 この店の特徴は、手作りで、しかも無添加。全国各地の農園から送られて来た果物や野菜をショップ内の工房でひとつひとつ丁寧に手作りしています。店主・川良さんの話では、「冷凍や加工された果物からの製造は一切行っていない」とのこと。ジャム作りに不可欠なペクチンもリンゴから抽出し、クエン酸もレモンを搾って摂っているそうです。おまけにこの店ではレシピがないらしいのです。同じフルーツであっても品種や収穫時期によって糖度や酸味などが違うために、生産者から送られて来た果物を見ながら加工するので、あえてレシピは設けていないのだと言います。
 だから「Kajyu」には、いつ行ってもジャムの定番といわれる苺や葡萄はありません。苺の旬が来れば、自ずと苺ジャムが棚に並ぶようになります。私が訪れた8月初めには「長野県富士見町産“真っ赤なルバーブ”」「愛知県豊橋産“イタリアントマトゴールド”」「和歌山県紀六園“季節限定すもも”」「山梨県萩原農園産“まるごとピーチ”」「沖縄県石垣島マエタケ農園産“南の島の島パイン”」「兵庫県宍粟市波賀町産“自然が育んだブルーベリー”」など15品種が品揃えされていました。中でも宍粟市波賀町のブルーベリーは、町興しの一環として作るようになったもので、ようやく2〜3年前から外に出せるような収穫量になったとか。ブルーベリーはジャムの定番ですが、その多くは外国産のものを使用しているそうで、国内産で、しかも波賀町に限定しているのは珍品中の珍品。このように生産地が見えるものは、今の時代、余計に安心感があります。
 珍しいといえば、ルバーブなど野菜のジャムがあること。ルバーブとはシベリア原産のタデ科の野菜。フキのような細長い形をしており、生で食べることはあまりないそう。若い女性には、これがことさら人気のようで、必ず籠に入れて購入して行くそうです。8月の時点ではトマトのジャムも2種類あって、ひとつはクックゴールドという黄色いトマトを使った「イタリアントマトゴールド」。このトマトは加熱すると、オレンジ色になるのだとか。赤いトマトのジャムは、ボンジョルノ種を使用した「イタリアントマト&ブラックペッパー」。これは黒胡椒を加えているため、料理にも用いることができそうです。川良さんによると、「糖度は55〜60度弱で揃えている」とのことで、「ものによって違うのですが、例えば梅だと、すっぱさが勝ってしまうので、あえて糖度を65度に上げて作らないと美味しくないのです」と話してくれました。「Kajyu」では、できるだけ近隣の県の果物で作っていきたいらしく、この後、どんなものがラインナップされるのだろうと考えただけで、ワクワクしてしまいます。
 かつてはジャムといわれ、苺やリンゴなどの定番しかなかったものを、いつのまにか「コンフィチュール」と呼び名を変えオシャレ感と品質がアップしました。今後、色んなショップや地方の町興しがコンフィチュール作りに力を入れるのではないかと思われます。そうなれば、あながち私のトレンド論も嘘ではないようにと思えてきます。

カジューの外観とジャムの写真

プロフィール

中原 航(なかはら わたる)

兵庫県姫路市出身。神戸の名門校である滝川高校を卒業後、メーカーへ就職。そこで営業職に就いたものの、何かモノを作る仕事に携わりたいと一念発起し、26歳でデザイン専門学校へ入学。専門学校卒業後は、教科書などの出版で知られる大阪書籍へ就職し、デザイン、レイアウトの仕事に従事する。同出版社では、日本料理の調理師が購読する料理専門誌「味感」の編集に携わったのをきっかけに食分野にもフィールドを広げる。その後、新聞社系デザイン会社を経て、2010年に独立。フリーランスのグラフィックデザイナーとして、ページ物(書籍や冊子)の制作を中心に活躍している。

中原 航(なかはら わたる)さんの写真

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