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勝手にトレンドウォッチャー 次は絶対、コレが来る!専門家が次のトレンドを大予想!?

飲食店プロデューサー、フードコーディネーター、マスコミ業界人など、食に関わる専門家が「次なるトレンド」というテーマで私論を展開します。当たるも八卦、当たらぬも八卦。さて、今月の専門家は何を予想しますやら…。

3月のゲスト 武部 信也 フォトグラファー 私が気になるもの つけ麺の全国化

3月のゲストは、料理写真を多く撮るフォトグラファーの武部信也さんです。武部さんがトレンド候補にと挙げたのが、第二次ブームも過ぎ、すでに一般化したつけ麺です。大流行したこの料理も武部さんからすると、まだまだ全国化には達していないそうです。首都圏では流行というのもおこがましいほど一般化したつけ麺をなぜトレンド候補に推すのでしょうか。取材する中で見えてきた実情を、撮影者の目で見つめてくれました。さて、武部流の理論やいかに…。

まかない料理がメジャーになった

 このコーナーで「つけ麺がトレンドに」と語ってしまうと、大半の人は「何をいまさら」と思うかもしれません。現につけ麺は首都圏ではスタンダードメニューになってしまっていますし、関西圏にも波及し、第二次ブームなるものを確立しています。
 しかし、全国を見渡すと、そのブームも大都会だけのもの。まだまだつけ麺の魅力を知らない地域がいっぱいです。そこで私はこの大都市のブームが全国へ波及していくことを願って、トレンド候補にあえて“つけ麺の全国化”を挙げたのです。
 すでに食べている人には馬の耳に念仏でしょうが、一応つけ麺について説明しておきましょう。つけ麺は、茹でた麺をいったん冷水で締めて皿に盛り、つけダレとともに提供するもので、いわばラーメンのざるそば版。つけダレに麺を浸して口に運ぶので、当然の如くラーメンのスープよりつけダレは濃くなっています。店によっては麺を食べ終わった後にスープ割りをして飲めるようにしている所もあるようで、これもまたざるそばで用いるそば湯と似ていますね。
 ざるそばのイメージをそのままラーメンに用いたのが発祥かと思いきや、調べてみると発祥の説は別のところにあるようなのです。その説については色々あるので、コレが正しいとは決められませんが、どうやら東京の「大勝軒」の山岸さんが商品化したのが定説になっているようですね。
 そもそもつけ麺はまかない料理から派生した料理。聞き及ぶところでは湯呑み茶碗にスープと醤油を入れたものへ、残った麺を浸して食べたのがきっかけです。商品化したのは1955年で、「特製もりそば」という名前で売られていました。

つけ麺の写真

東京のスタンダードが関西へ波及

 「大勝軒」のつけ麺は有名で、山岸さんが弟子を取るようになってから暖簾分けした店が各地でオープンしています。最近流行の関西でも東京の「大勝軒」で修業した人がつけ麺を出しており、首都圏ほど影響力はないものの、「大勝軒」のつけ麺がブームの一角を担っているのは間違いありません。

武部さんとつけ麺の写真

 かつて関西では、つけ麺は流行らないとの説が流布されていました。どうしてそう言われていたのか、確たる答えはわかりませんが、私は関西がダシに重きを置く傾向にあるからではと考えてしまうのです。昔から関西では昆布を用いてダシを摂っており、和食のダシには秀でたものが見られます。ラーメンのスープとは違うものですが、この考えからやはり麺にはきちんとしたスープがいると考えられており、関西人がつけ麺をラーメンの亜流ととらえられていたからではないでしょうか。だから以前起こった第一次ブームでも、いっこうに広まらなかったのです。
 そうは言いながらもそのスタイルのイメージからか、夏の麺として冷し中華のような感じで提供していた所は徐々には増えてはいたのです。それが2〜3年前に起きた第二次ブームで一挙にブレイク。昨年からはラーメン店のスタンダードメニューとして一般化してきたようです。

魚介系のスープが増加した

 私は某誌の取材で、現在、つけ麺の撮影を行っています。取材している中で私がとみに感じるのは、スープが和風っぽくなってきたこと。醤油系のものはカツオ節が効いて食べやすくなったと思います。別につけ麺のみの傾向ではないですが、このところラーメンのスープに魚介系のあっさりスープがよく見られます。一時はとんこつが他のスープを凌駕した感もあったのですが、さすがにそれに飽きたのか、魚介系にとんこつを合わせたものや、魚介系に鶏ガラを合わせた、いわゆるWスープがこのところは増加しているのです。
 東京は鶏ガラスープであっさり、九州はとんこつスープでこってりと、かつては地域ごとに特徴があったのですが、近年のグルメブームやマスコミの影響で、その垣根さえ崩れつつあるようですね。これは蛇足ですが、和食のイメージが強い京都が、意外にもラーメン店のレベルが高いのですよ。それにスープもとんこつで、こってりしたものが多いですね。これは和食の薄味文化の反動かもしれませんね。
 ラーメン店で話を聞くと、味噌や醤油に比べ、塩は難しいらしいのです。シンプルが故に味が調いにくいのだそうです。味がブレるとすぐにわかってしまう。だから塩ラーメンはそこまで流行らないのかもしれません。毛色の変わったものでは、トマトスープが挙げられます。和食出身の人よりイタリアン出身の人の方がラーメンには向いているのか、その手の人が作ったラーメンやつけ麺がやたらと旨かったりします。どうもパスタ感覚でラーメンをとらえているから、イタリアン出身の人が作るものは美味しいのかもしれません。
 東京においては当たり前だったつけ麺が、その不毛の地(関西)で流行したおかげで、つけ麺の全国化も夢ではなくなりました。
 首都圏に住む人は、そんな風に語ると、首をかしげるかもしれませんが、田舎町に行くと、うどん、そばはあってもラーメン店を目にすることが少ないのに気がつきます。ましてやつけ麺なんてもってのほかですね。
 考えてみると、ラーメンはファストフードに分類される食べ物なのでしょう。忙しいから、時間がないからラーメン店に入る。だからラーメン文化は都会の文化なんですよ。
 首都圏ではブームを過ぎて一般化し、その波が関西へ来て第二次ブームでやっと広まった。そんなウェーブが札幌や福岡、仙台でも見られ、やがて日本津々浦々までつけ麺が行き渡る。そんな光景がつけ麺を出す店を取材(撮影)している私には見えて来て仕方ありません。流通の発達や情報の伝達が盛んになり、地方との壁が徐々になくなりつつある昨今、私はつけ麺が流行だけに届らず、地方色のあるものへと発展しないかと期待しています。郷に入れば、郷に従え、そんな言葉があるように、スタンダードなつけ麺が全国化した後は、新たな味のものが誕生することを予感しているのです。

つけ麺の写真

プロフィール

武部 信也(たけべ のぶや)

料理写真を中心に雑誌や広告の分野で活躍するフォトグラファー。写真専門学校を卒業し、料理写真家である本田信治さんに師事し、撮影技術を修得。上京してデザイン事務所のカメラマンとして様々な写真を撮影した。30歳の時に再び本田氏のもとへ戻り、トロアスタジオで20年間撮影の仕事に従事。その後、フリーのフォトグラファーとして独立し、武部写真事務所を開く。現在は雑誌のグルメページの撮影や仕出し専門店などの商品撮影を行っている。ラーメン本の取材は8年目に入り、今年はつけ麺を多く撮っているそうだ。

武部 信也さんの写真

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